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退院患者調査データの使い方 -その1-

2020年6月1日

1.退院患者調査について

厚生労働省は、2020年3月25日に、2018年度における退院患者調査の結果を公表しました。公開されたデータには、どの病院に、どの疾患の患者が、どれくらい入院していたのかなどが分かる情報(詳細は後述)が記載されています。

今回の調査は、約4,700病院が対象となっており、分析対象となった入院件数は1,162万件にのぼります。同年における医療費の動向調査をみると、全国の推計新規入院件数は1,572万件となっていることから、入院全体に占める74%の情報が退院患者調査から取得できることが分かります。

下の図をご覧いただくと分かる通り、調査対象となる病院の範囲は年々拡大しています。今回のブログでは、退院患者調査データを使った地域分析の方法をご紹介したいと思います。

入院件数_上昇病院

※公開先URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000049343.html

2.公開データの内容

退院患者調査のデータを使うと、自院の情報を他院と比較しながら見ていくことができます。

把握できる情報は大きく分けて3パターンあります。1つ目は入院患者がどこから来院したのか分かる「経路情報」、2つ目は入院患者が何の疾患で何日入院したのかが分かる「入院情報」、3つ目は入院患者の退院先や退院時の状態が分かる「退院情報」です。

また、これら3つの情報を分析していく上で欠かせないのが、病院が所在する都道府県や市町村、病棟機能毎の病床数などが分かる「病院情報」です。この4つの情報を組み合わせると、地域医療の実情をある程度つかむことができます。

退院患者調査

3.病院情報を比較する

まずは、病院情報について取り上げます。退院患者調査の結果が公開されているページにある「施設概要表」というファイルをダウンロードすると、病院が所在する都道府県や市町村を特定するための情報と、その病院がもつ病床機能毎の病床数などを把握できます。

下の図は、ある市町村番号を指定して抽出した5病院の情報をまとめたものです。病床数の多い順にみていくと、A病院はDPC病床・地域包括ケア病床・療養病床の3区分、B病院はDPC病棟・地域包括ケア病床の2区分、C病院はDPC病床だけで運営していることが分かります。

A病院・B病院・C病院はいずれも同じくらいの病床数ですが、この情報を参考にすると、地域内で担っている機能はそれぞれ異なると考えられます。

病床数

4.入院経路を比較する

次に、経路情報について取り上げます。退院患者調査では、入院患者がどこから、どのようにして来院したのかが分かる情報が記載されています。

A病院からE病院に入院した患者が入院前にいた場所をみてみると、A病院からD病院は家庭からの入院が8割以上を占めていますが、E病院は58%と低くなっていることが分かります。

また、A病院からD病院は病院・診療所からの転院より、介護・福祉施設からの入院が多いですが、E病院は病院・診療所からの転院のほうが多くなっています。5病院のうち、回復期リハビリテーション病床をもつ病院はE病院だけなので、A病院からD病院を退院した患者を受け入れるポストアキュート機能を担っている可能性が示唆されます。

病院別入院経路

 

次に、患者がどのような経路で入院したのかをみていくと、紹介あり入院数や予定外入院数はA病院がB病院を上回っていますが、救急車搬送数や救急医療入院数はB病院がA病院を上回っていることが分かります。これにより、A病院とB病院では、集患ルートに違いがあることが分かります。このように、病院情報と入院経路情報を組み合わせると、地域の医療機関が担う役割を客観的事実を元に推測していくことができます。

AB比較

今回は、退院患者調査データの使い方(前編)として、病院情報と入院経路情報について取り上げました。後編となる次回は、退院患者調査のメインとなる入院情報と、退院先情報についてご紹介させていただきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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