2016年10月20日
10月19日に行われた中医協の調査実施小委員会において、
第21回医療経済実態調査の方法や調査項目の検討が行われました。
医療経済実態調査とは、診療報酬改定の前年に行われる調査で、
全国の医療機関から過去2年度分の収支情報を収集し、
次期改定の参考となる資料を作る目的で実施されています。
医療経済実態調査の結果は厚生労働省のサイト上で公開されており、
現在公開されている最新の公開データでは、
平成25年度と平成26年度の収支実績を確認することができます。
下の図は、平成25年度(前々年)と平成26年度(前年度)の、
一般病院の収支状況が記載されたものです。
画面右にある全体の欄を見ると、全国平均の損益実績を把握することができます。
平成25年度から26年度にかけての伸び率を見ると、
収益は伸びているものの、費用がそれ以上に伸びていることが分かり、
平成25年度から26年度にかけては増収減益の傾向にあったことが伺えます。
科目毎の内訳を見ると、医業収益が約5,700万円増加しているのに対し、
給与費は約6,400万円増加しているため、これが減益の大きな要因となっているようです。
その他の科目も、医薬品費などを除くとほとんどの科目で収入の伸び率を上回っています。
過去の医療経済実態調査では収入の増加率が費用の増加率を下回ったことがなかったため、
多くの病院では増収を目的とした取り組みが病院経営の中心になっていたと思いますが、
平成26年度以降の病院経営において収支最適化が重要なテーマになっていることが分かります。
さて、このような統計データは、医療経済実態調査以外にも、
同じく厚生労働省のサイト上から閲覧できる病院経営管理指標や、
病院運営実態分析調査(日本病院会・全国公私病院連盟)などがあります。
下の図は、全国公私病院連盟のサイトから閲覧できる病院運営実態分析調査の結果です。
医療経済実態調査の最新データよりも新しい平成27年度の結果が公開されており、
これを見る限りでは平成27年度に入ってから給与費比率に若干の改善傾向が見られるようです。
自院の経営指標だけで問題点を特定するのはなかなか難しいと思いますので、
これらの結果を見たことの無い方がいらっしゃいましたら目を通すことをおススメします。
以下に各サイトのURLを掲載しますので興味のある方はご参照ください。
医療経済実態調査(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/database/zenpan/iryoukikan.html
病院経営管理指標(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/igyou/igyoukeiei/anteika.html
病院運営実態調査(日本病院会・全国公私病院連盟)
http://www005.upp.so-net.ne.jp/byo-ren/2/
病院経営調査報告(全日本病院協会)
http://www.ajha.or.jp/voice/reports.html
2016年10月19日
10月14日に行われた経済財政諮問会議において、
医療費の地域差是正に関する議論が行われました。
厚生労働省が公開している医療費の地域差分析を見ると、
人口一人あたりの医療費が最も高い高知県は65.8万円となっており、
最も安い千葉県と比較すると22.7万円の差があります。
経済財政諮問会議(議長=安倍晋三首相)では、
都道府県毎の医療費格差を半減するという目標を掲げており、
会議後の記者会見では首相から対応策を具体化するよう指示が出たことが明かされました。
医療費格差の内訳を見ると、一人当たり入院費の格差(18.4万円)が大きいことが分かります。
厚生労働省が以前より主張しているのは人口当たり病床数との関連性です。
下記の図は、各都道府県の人口10万人あたりの一般病床数と、
一般病床の入院需要率指数(全国平均の受療率=100としたもの)を表にまとめたものです。
これを見ると、人口当たりの一般病床数が多いほど一般病床の入院受療率が高い傾向にあります。
次に、一般病床の入院受療率と一人当たり医療費の関係性をまとめたものが下の図です。
結果を見ると、入院需要率が高いほど一人当たりの医療費も高い傾向にあるため、
地域格差の要因は人口当たり病床数であるという厚生労働省の主張は正しいようです。
仮に、人口当たりの病床数が入院受療率を左右しており、
入院受療率の違いが医療費の地域格差を生んでいるとすると、
地域医療構想に基づいて病床数の削減を進める地域では受療率自体も縮小していくと考えられます。
地域医療構想における将来の必要病床数は現在の受療率を元に算出されており、
受療率自体が変化することは加味されていないため、
病床数の削減を進めている地域の方は受療率の推移も注意深く見守った方が良さそうです。
2016年10月13日
平成26年に成立した医療介護総合確保推進法により、
各都道府県は地域医療構想を策定することが義務付けられています。
地域医療構想とは、2025年の医療需要と病床の必要量を推計し、
目指すべき医療提供体制を実現するための施策を定めるもので、
地域医療構想調整会議において各関係者間での協議が行われます。
そこで、地域医療構想をまとめる上で重要な指標となる、
医療需要の推計方法について調べてみると、
地域医療構想ガイドラインで以下のように定義されていました。
【2025年の医療需要推計方法】
2013年の性年齢階級別の入院受療率
×2025年の性年齢階級別推計人口
各指標について詳しく見ると、
性年齢階級別の推計人口数は、国立社会保障・人口問題研究所が公表している、
日本の地域別将来推計人口(中位推計)を利用することになっています。
以下の図は、2002年公表の2010年の人口推計(推計値)と、
2012年公表の2010年の人口数(実績値)をまとめたものです。
これを見ると、推計値と実績値の差がほとんどないことが分かります。
もう一つの指標である性年齢階級別の入院受療率に関しては、
高度急性期~回復期機能についてはNDBのレセプトデータ及びDPCデータで、
慢性期機能については地域差の縮小目標を設定しそれぞれを推計するとなっています。
これらのデータは一般に公開されていないため利用することができませんが、
厚生労働省が公表している入院受療率のデータ(患者調査)を用いることで、
地域医療構想で決められたルールに近い形での推計を実施することはできます。
下のグラフは、2002年の患者調査で公表された年齢別の入院受療率と、
2011年の患者調査結果を比較し指数化したものです(2002年の結果=100と設定)。
ご覧頂くと、全ての年齢階級で大幅に受療率が落ちていることが分かります。
入院受療率が低下した要因については、
医療技術の進歩、医療制度改革、公衆衛生の改善、生活習慣の変化など色々と考えられますが、
性年齢階級別の入院受療率は年々減少傾向にあるようです。
参考指標として、2002年時点で公表されていた性・年齢階級別入院受療率と、
同じく2002年の時点で公表されていた2010年の性年齢階級別推計人口を用いて、
2000年から2010年にかけての入院推計患者数を指数化しました。
地域医療構想ガイドラインに沿って推計を行うと、
2000年から2010年にかけての10年間で、
入院患者数は22%増加するという推計になりました。
一方で、厚生労働省が2002年に行った患者調査の結果と、
2011年に行った患者調査の結果を比較すると、
実測値については推計と真逆の8%減少となっています。
これらの結果をまとめると、将来の人口推計はかなり精度が高いものの、
入院受療率は経年的に減少していく傾向にあるため、
ある時点の受療率を切り取った将来推計では過剰推計になる危険性がありそうです。
もちろん、受療率の低下傾向が今後も続く保証はありませんが、
過剰推計を基に病院運営の方向性を決めることは将来の不採算事業を生む可能性があるため、
地域医療構想に用いるデータの取扱いには一定の注意が必要なようです。
2016年10月11日
10月9日に行われた第58回全日本病院学会において、
当サイトを運営するメハーゲングループ協賛による、
ランチョンセミナーを実施致しました。
セミナーでは、院内データを活用した経営改善をテーマに、
新小倉病院の経営企画課に所属している吉崎様より、
当サイトや弊社経営支援システム「ZERO」の活用事例等をご紹介頂きました。
当日は、用意していたチケットが配布開始早々に無くなってしまい、
多くの方にご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。
日程の都合で参加できなかった方や、チケットをもらえずに入場できなかった方には、
当日配布資料のご送付などを行っておりますので、
お気軽にお問い合わせフォームからご連絡頂けますと幸いです。
2016年10月7日
10月8日、9日に行われる、
全日本病院学会におけるランチョンセミナーで、
上昇病院.com(以下当サイト)をご紹介することになりました。
演題は院内データを活用した経営改善、
サブタイトルは経営支援システム「ZERO」を用いた取り組みで、
当サイトを運営しておりますメハーゲングループ(以下当社)が協賛しております。
なお、セミナー当日にご紹介させて頂く当社の経営支援システム「ZERO」は、
院内の各部門で独立して管理されている収入・費用データを統合し、
院内の収支状況を詳細に把握することができるシステムです。
厚生労働省や全日本病院会、日本病院会などが公表している経営統計データを見ると、
平成26年度改定以降の病院経営は「増収減益」がトレンドとなっており、
収入一辺倒の時代から収支最適化の時代へと移り変わりつつあります。
収入を増やすための取り組みに比べると収支最適化に向けた取り組みは難しく、
コストの削減は現場の反発・モチベーションの低下に繋がります。
これらの課題を解決するために役立つのが経営支援システム「ZERO」です。
経営支援システム「ZERO」を利用すると、
入外別・診療科別・病棟別・疾病別・患者別など様々な角度から分析ができ、
院内で発生している収入と費用のバランスを把握することができます。
システムの詳細は当社運営サイト「メディエイドスクエア」に記載されておりますので、
ご興味のある方はそちらのサイトをご覧いただけますと幸いです。
(無料会員登録して頂けますとオンラインデモを実施することも可能です)
メディエイドスクエア「ZERO」ご紹介ページ:
http://www.medi-aid.jp/products/zero/