2020年5月29日
1.全国の入院患者数は増加傾向にある
医療費の動向調査によると、
推計新規入院患者数は2009年度から10年連続で増加しています。
2018年度の入院件数は10年前に比べ16%増加しており、
医療費が増加を続ける要因の1つになっています。
退院患者調査の結果を見ると、
既に入院件数が減少している都道府県もあります。
2016年と2017年における病院の入院件数を都道府県別に集計すると、
岩手、秋田、鳥取の3県は減少していることが分かります。
3.入院患者が減少している都道府県の状況
2016年から2017年にかけて入院件数が減少した鳥取県には、
3つの医療圏(中部・西部・東部)があります。
このうち、西部・東部医療圏は入院件数が減っているものの、
中部医療圏では増加していることが分かります。
4.医療圏の状況と医療機関別の状況には差がある
下の図は、入院件数が増加している中部医療圏と、
減少している西部・東部医療圏に所在する医療機関別の状況です。
中部医療圏(青)全体では入院件数が増加していたにも関わらず、
医療機関単位でみると8病院中5病院が前年実績を下回っています。
反対に、入院件数が減少している西部(橙)・東部医療圏(赤)にも、
入院件数の増加している病院が存在していることが分かります。
5.医療圏の需要増減が個々の病院に与える影響
同様の分析を全国で実施したところ、
2016年から2017年にかけて入院件数が増加した医療圏の割合は65.3%でした。
しかし、入院件数が増加している医療圏に所在する医療機関のうち、
40.4%の病院では入院件数が減少しています。
このことは、各医療圏における入院需要の変化が、
当該医療圏に所在する病院の入院件数にそれほど影響していないことを示しています。
6.地域医療調整会議が重要な理由
今回のブログでは、地域の需要動向が、
各病院の実績に直結するケースが少ないことを説明しました。
医療需要の将来推計は、
周辺病院の動向を知ることによって初めて価値が生まれます。
厚生労働省の地域医療構想に関するワーキンググループが、
2019年9月26日に公開した病院再編リストも、
作成の目的は「調整会議における議論の活性化」とされています。
将来に向けた投資の効果を見誤るリスクを避けるためにも、
地域医療構想調整会議におけるオープンな議論の活性化が期待されます。